羽毛に向き合うクリーニング
良い羽毛ふとんを、長く愛用するために。
必要なのは、ただ「洗う」ことではなく、「どう洗うか」という視点です。
私たちは、製品になる前段階である原毛(げんもう)に課される、厳しい世界基準の考え方を、ふとんのクリーニング工程にも取り入れています。
1. タンパク質を守る「35℃」という目安
羽毛の主成分は、髪の毛などと同じ「ケラチン」というタンパク質です。
タンパク質は、60℃を超えると構造が変化し、硬くなりやすいことが知られています。一方で、人の皮脂汚れは、30℃台半ばで溶け出しやすくなります。
原毛の精製工程では、こうした性質を踏まえ、30〜35℃前後の微温水による洗浄が行われています。
これは、
・人の皮脂汚れは、きちんと落とす
・羽毛のしなやかさを支えるタンパク質は、傷めない
という、羽毛にとって無理のない温度帯です。
ベッテンスタジオがクリーニングにおいても水温にこだわるのは、原毛基準の考え方を大切にしているからです。

2. 油脂分「1%前後」という考え方
羽毛の弾力や復元力は、ごくわずかな天然のワックス(油脂分)によって支えられています。
この油脂分は、品質評価における重要な指標とされており、IDFBや欧州規格 EN 1163では、油脂分の測定方法と評価基準が定められています。約1%前後は、洗浄と弾力のバランスが取りやすい状態として、ひとつの目安として扱われることが多くあります。
ベッテンスタジオでは、「この1%前後の油脂分を残しながら、不要な汚れだけを落とす」ため、低濃度・短時間で管理されたオゾン水洗浄を採用しています。

3. オゾン水洗浄という選択
── なぜ「汚れ」に優先的に作用するのか
オゾン水洗浄の特徴は、分子の安定性(壊れにくさ)の違いに基づいて作用する点にあります。
この性質を利用し、低濃度のオゾン水で短時間洗浄することで、羽毛本来の潤いを保ったまま、汚れだけを除去します。
| 比較項目 | 人の皮脂(汚れ) | 羽毛のワックス(潤い) |
|---|---|---|
| 化学名 | 不飽和脂肪酸・トリグリセリド | ワックスエステル |
| 分子の結合 | 二重結合が多く不安定 | 単結合が主体で安定 |
| 状態 | 酸化しやすい | 酸化しにくい |
| オゾンの反応 | 反応しやすい(分解されやすい) | 反応しにくい(分解されにくい) |
| 融点 | 約30〜37℃ | 約45〜60℃以上 |
4. 「残留薬剤」を残さないという考え方
一般的な漂白剤(次亜塩素酸ナトリウムなど)は、強力な反面、繊維に負担をかけ続けることがあります。オゾンは反応後、速やかに酸素(O₂)へと戻るため、理論上、洗浄成分が残留しません。
羽毛にも、側生地にも、余計なものをできる限り残さないこと。
それを、私たちは大切にしています。
| 比較項目 | 一般的な界面活性剤 | オゾン水(O₃) |
|---|---|---|
| 仕組み | 油を乳化させて溶かす | 酸化分解で結合を断つ |
| 油脂への影響 | 全ての油脂が除去されやすい | 安定した天然油脂は守る |
| 仕上がり | 脱脂状態になりやすい | 潤いを保つ |
| 残留物 | 洗剤成分が残ることがある | 反応後は酸素に戻る |
5. ダウンパワーを引き出す「低温乾燥」
洗浄と同じくらい重要なのが、乾燥工程です。
DITFなどの研究では、高温乾燥や過度な摩擦が、フィルパワー低下の要因になることが示されています。
低温で空気を送り込みながら、じっくり乾燥させることで、ダウンは本来の立体的な形状を取り戻しやすくなります。

私たちが目指すのは、「汚れを落としたその先」
清潔にすることは、もちろん大切です。
けれど、それだけをゴールにはしていません。
私たちは、汚れを落としながらも、羽毛ふとんの風合いや寿命を守り、長くご愛用していただくためのクリーニングを大切にしています。
そのため、本来は水洗いが不可能とされる繊維を、水で安全に洗い上げる特殊な技術ライセンスを持つ国内の専門工場と連携し、クリーニングを行っています。



